事例名
ファジィ原子炉運転継続診断システム
企業・団体名
日立製作所
出展
日刊工業新聞 1990年
内容
ファジィで異常検出 日立が診断システム 日立製作所(社長三田勝茂氏)は日立エンジニアリング(日立市)と共同で、ファジィ推論を応用して原子炉の水質データから初期異常を検出、運転継続の可否を判断する診断システムを開発した。同システムは、導電率とpH(水素イオン濃度)の微小な変動をもとにリアルタイムで一次冷却水の異常から原因を突き止め、重大事故に結びつく異常をごく初期段階で検出して原子炉停止などの事態を防止できる。また、定期点検時の作業者の被ばく軽減などにも役立つとみられ、同社はこの成果を23日からフランスのリヨンで開かれる欧州原子力学会主催の90年国際会議で発表する。対象となる原子炉は、東京電力・福島第二原子力発電所の改良型BWR(沸騰水型軽水炉)など。原子炉に異常が生じるとほとんどの場合、冷却水成分の変動がみられることをもとに、オンライン計測している導電率とpHからリアルタイムで異常の概要を判断するとともに、オフラインで得られる冷却水の微小含有元素分析などのデータから、正確な診断と、予想されるその後の異常の進行を判定する二段構えになっている。システムの中核は、水質変化を複合的にとらえて高速推論するファジィ回路。茨城大学情報工学科の林陽一助教授が開発した回路をもとに、日立エンジニアリングが林助教授とともに原子力用に開発した。異常を数段階のレベルに分けて検出することから、原因の判定と確認、運転継続の可否までをほぼリアルタイムで判断できる。