この度,理事会の声を会員の皆様にお伝えするため,学会誌の発行に合わせ,「理事会だより」を掲載することとなりました.本欄では,理事会で現在検討されているトピックの紹介,理事会から会員の皆様へのお知らせ・お願いなどをお伝えしていく予定です.
現在理事会では,「学会の法人化に向けた調査・検討」,「主催会議(FSS,SCIS)開催支援体制の強化」,「サイト会員制度の導入」など,様々な内容について議論を重ねています.これらの中で今回は,「学会の活性化」について,現在推し進められている方向性を紹介させていただきます.
昨年度末,平成20年度事業計画の作成にあたり,「支部,研究部会,ベンチャー研究会活性化に関するお願い」という依頼文が,古橋会長より各支部・研究部会・ベンチャー研究会の代表に送付されました.本依頼は講演会・研究会の開催回数を例年より1回増やすことをご検討いただくこと,及び研究会での優れた発表に対し,積極的に学会誌への投稿を勧めていただくことの依頼です.本理事会では,「学会活動の基本は論文誌とSCIS, FSS,そして支部・研究部会・ベンチャー研究会の活動であり,多くの研究者・技術者を惹きつけることのできるトピックはこれらの基本活動の中から生まれ,育ってくるものである.」と考え,最大限その活動を支援していきたいと思っています.私自身も支部研究会の幹事を経験しておりますので,研究会を年1回増やすことがどれほど困難であるかは理解していますが,学会誌への投稿推薦など,各部会等でできるところからだけでも進めていただくことで,きっと学会全体の活性化につながっていくと信じております.
また今回は,山川烈先生のFuzzy Systems Pioneer Awards受賞紹介記事を掲載いたします.紹介記事を執筆いただいた九州工業大学の神酒勤先生には,この場をお借りしてお礼を申し上げます.
第10期庶務担当理事 吉川 大弘
九州工業大学 神酒 勤
Fuzzy Systems Pioneer Awardsとは、ファジィシステムの分野を切り開いた基本概念の提案や開発に重要な貢献のあった方にIEEE Computational Intelligence Societyから贈られる賞です。2000年に設置され、これまでにザデー先生始め著名な先生方が受賞されており、日本人では菅野道夫先生(2000)に続いて山川先生がお二人目の受賞です。今回の受賞は、ファジィチップ、ファジィコントローラをはじめとするファジィハードウエアシステム開発のパイオニアとして、その技術を基盤にファジィ理論を広く世界に浸透させたことへの重要な貢献に対して贈られたものとお聞きしております。山川先生は、アナログモード・ファジィ論理回路(1980), pMOSファジィ論理集積回路(1983), CMOSファジィ論理集積回路(1984),ファジィコントローラ(1986), ファジィコンピュータ(1987), ファジィプロセッサ(1988), ファジィニューロンチップ(1991), カオスチップ(1992)とソフトコンピューティング分野で常に時代を先取りしたチップを開発され、これらは同分野の研究者の道標となり、学会だけでなく産業界にも多大な貢献をされています。
ファジィチップ開発当時(1980年代)は、現在のようにLSIを大学で簡単に設計できる環境はなく、自力で実験室をクリーンなルームへ改造、各種装置を自作、試行錯誤を繰り返し、着想から8ヶ月でpMOSトランジスタの試作に成功、翌年、世界初のアナログモード・ファジィICの開発となりました。限界差がファジィ論理演算のユニバーサル関数であることに着目、シンプルなトランジスタ回路で実現され、ファジィ論理用セミカスタムICという形で集積回路化されました。その後、日本で開催された2nd IFSA World Congress(Tokyo 1987)で、立石電機梶i現在のオムロン梶jと共同開発されたファジィコントローラを発表され、ファジィシステムの頑健性、柔軟性、設計性の良さをデモで実証されました。また、会場からの要望に応え、倒立振子の棒の代わりに一輪の生花を見事に立てられ、モデル化が困難な対象に容易に対応するファジィシステムの実力を確信させることになりました。これらの技術は、ファジィ推論を高速に超並列で実行するアナログファジィプロセッサ(ルールチップ・デファジィファイアチップ)として実用化されました。関連論文としては、非線形アナログモードのファジィ論理回路およびそれを用いたファジィコントローラの構成について述べられた“A Fuzzy Inference Engine in Nonlinear Analog Mode and Its Application to a Fuzzy Logic Control (Invited Paper)”[1]、ファジィ理論とニューラルネットワークを融合したファジィニューロンに関する“Silicon Implementation of Fuzzy Neuron (Invited Paper)”[2]が挙げられております。なお、授賞式は2008年6月に香港で開催のIEEE WCCI 2008で行われます。最後に、山川先生の今後益々のご発展をお祈りし受賞のご紹介とさせていただきます。
[関連論文]
[1] Takeshi Yamakawa, IEEE Trans. on Neural Networks, Vol.4, No.3, pp.496-522, 1993.
[2] Takeshi Yamakawa, IEEE Trans. on Fuzzy Systems, Vol.4, No.4, pp.488-501, 1996.