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令和10年度 科研費 の公募から適用する「審査区分表」等に関して

  • koshino99
  • 4 時間前
  • 読了時間: 5分

科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会で,令和10年度科学研究費助成事業(科研費)の公募から適用する「審査区分表」(見直し案)が検討されています.これに対し,日本知能情報ファジィ学会は,小区分61040の内容の例から,「ファジィ理論」が削除されることに断固反対します.その理由は以下の通りです.

 

・    ファジィ理論やニューラルネットワーク,進化計算,確率推論を含む低コストで実用性の高いシステムの開発を目指すソフトコンピューティングの概念は,ファジィ理論から生まれたものです.ソフトコンピューティングの中心的な理論である「ファジィ理論」が小区分61040の内容の例から除かれているのは不自然です.

・    ファジィ理論は説明AIで極めて重要で,発展が強く期待されています.また,データが大量にない場合にも,専門家の経験的知識に基づくモデルを補って実用可能性の高い知能システムを構築できます.ファジィ理論を用いれば,基本モデルがファジィ集合を含むルール形式で表され,データに応じて自由な表現が可能になるうえ,人間にとって分かりやすく,その意味で信頼できるシステム開発が可能となります.このような性質をもつ手法は少なく,「ファジィ理論」を削除することは妥当ではありません.

・    Society 5.0などの人とAI・ロボットなどが共生する社会を目指す上で,説明可能AIや知識表現など,人間的なあいまいさ・不確実性を扱える唯一の体系的枠組みである「ファジィ理論」を削除することに反対します.

・    工学系で最大規模の国際学術団体であるIEEEに学術誌Transactions on Fuzzy Systemsがあり,インパクトファクターも10を超え,世界に注目されています.このような最先端のキーワードである「ファジィ理論」を科研費の内容の例に残すことは,日本の研究に対する見識を示すことになる.

・    2025年5月時点での Google Scholar によると,研究分野で参照される論文件数は次のようになっています.

- artificial intelligence:約 18,600(2024年以降)

- AI:約 25,800(2024年以降)

- AI:約 59,800(2021年以降)

- Generative AI:約 30,500(2024年以降)

- Generative AI:約 53,600(2021年以降)

- robot:約 17,100(2024年以降)

- robot:約 23,100(2021年以降)

- fuzzy:約 63,500(2024年以降)

- fuzzy:約 242,000(2021年以降)

- fuzzy:約 1,070,100(期間指定なし)

- artificial intelligence + fuzzy:約 115,000(期間指定なし)

この結果から,「ファジィ理論」の研究は,減少することなく継続的に増大しているといえます.この意味でも「ファジィ理論」を内容の例から削除することは妥当とはいえません.

・    ファジィ理論は,日本で唯一欧米に知識を輸出できた情報処理技術であり,1990年代には日本政府もその技術を後押ししていました.ファジィ理論の基礎や応用の研究は日本が世界をリードしています.ファジィ理論に関連した特許数や論文数は,日本が世界中に占める位置も高いと考えられます.「ファジィ理論」は残すべきです.

・    ファジィ理論の産業応用で日本は世界を牽引してきました.ファジィ測度論も日本発の理論であり,国内研究者の努力により理論が整備され,非加法的測度論として大きく発展しています.現在ではこの理論が海外でも引用され,機械学習や人工知能の解析・応用に広がりつつあります.ファジィ測度論や非加法的測度論は今後のAIの発展においてとても重要になり,日本が今後,日常的な知能をもったAIを構築する上でも再度トップランナーとして走ることができる重要な可能性をもった理論です.審査区分表から「ファジィ理論」を削除することは,先端的な研究潮流を無視し,日本の人工知能研究と国際競争力の発展を妨げるおそれがあります.

・    「ファジィ理論」に基づく手法や技術は,特定のターゲットを対象にしたものでなく,制御,推論,評価など種々の知的機能の発現や,工学,医療,芸術,エンターテイメントなど様々な分野に適用される学問体系です.そのため,「ファジィ理論」を陽にキーワードが記されていなくとも,ファジィ理論が重要な役割を果たしている研究課題は少なくないと考えられます.「ファジィ理論」は重要です.

・    機械学習などは他にも含まれていますが,ファジィ理論に該当する項目は他にはなく,ソフトコンピューティングが唯一の項目です.「ファジィ理論」を削除することは望ましくありません.

・    検討されている細目「機械学習モデルおよびソフトコンピューティング関連」のキーワードは,学習関係に偏っています.低コストで実用性の高いシステムを開発するというソフトコンピューティングの思想を表すキーワードが不足しています.内容の例の変更により小区分の範囲が狭まっています.細目名のキーワード選択の妥当性を強く欠いています.「ファジィ理論」を削除することに反対します.

・    日本には,日本知能情報ファジィ学会があり,毎年,200件以上の研究発表,300名以上の参加者が集うファジィシステムシンポジウム(国内会議)を開催しています.北海道から九州まで八つの支部,15の研究部会があり,多くの研究会やワークショップを毎年日本で開催し,ファジィ理論の発展と普及に努めています.人間の感覚にあった情報をコンピュータで処理できる重要かつ有用な技術を提供し,幅広い分野に適用され,発展を続けている.「ファジィ理論」を削除すべきでない.

 

日本知能情報ファジィ学会 第19期理事会一同 

 

 
 
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